へびと船長
- タイトル:へびと船長
- 著者名:文・ふしみみさを 絵・ポール・コックス
- 出版社名:BL出版
- 刊行年月日:2021/2/20
- ページ数:32ページ
- ジャンル:絵本
- 3歳ぐらいから
- 5歳の女の子へのプレゼントに買いましたが、どちらかというと、男の子向けの内容かもしれません。
あらすじ
フランス・バスクのむかしばなし。
世界の海を渡り歩いた船長が船を失い、海辺の町でほそぼそと暮らしていました。
船長は、海辺にすむヘビに、やさしく声をかけました。
「いのちは神さまのおくりものだ。たいせつに生きるんだよ」
そんなある朝のこと。
とつぜん、ヘビが船長に話しかけました。
船長は頑丈な船をつくり、12人のたくましい船乗りをやとい、ヘビとともに再び海へと乗り出します。
7色に限定したやさしい色使いで描かれる不思議な物語
この絵本で一番に目に飛び込んでくるのは、深い赤。
イラストを手掛けたフラン人アーティスト、ポール・コックスにとって、赤はまさに「バスクの色」なのだそうです。
本書では、本全体に独特のハーモニーを与えるために色数をあえて7色に限定したそうです。
緑、赤、黄、青、水色、茶、黒
どれも深みのあるいい色合いで、どこか懐かしい感じのするイラストです。
絵本を選ぶときのポイント
私は、甥と姪が生まれてから、ほぼ毎月、二人に絵本を贈っています。
子どもたちの興味は目まぐるしく変わります。
毎月、いまはどんなことに興味があるのかをリサーチ。
本を選びにいくたびに、「こんなことに興味を持つようになったのか」とか、「もう、こんなに文字があっても読めるようになったのか」と、子どもたちの成長を身近に感じられて、とても楽しいです。
身近に小さなお子さんがいらっしゃる方は、ぜひ、お母さんにリサーチを入れて、絵本をプレゼントしてみてはいかがでしょうか?
絵本を選ぶときに重要視しているのは、あたりまえかもしれませんが、「絵」と「物語性」です。
絵本は、小さなころから芸術に触れることができるとても身近な手段です。
子どもたちの感性を豊かに刺激してくれるような「絵」を選びたいと思っています。
ただ、美しすぎる絵には、あまり興味を示してくれません…。
小さいうちは、どちらかというと、派手でわかりやすい漫画のような絵に惹かれる傾向があるようです。
物語性も重要だと思います。
小さなうちから、豊かな想像力をはぐくんでくれるような、自由に空想の翼を広げられるような絵本を選びたいなと思っています。
今回、書店の店頭でこの絵本を見つけて、ページをめくってみて、「次はいったいどうなるんだろう?」と最後までワクワクしながら読みました。
この、「ワクワク感」を子どもたちにも味わってもらいたい、そんな思いで本を選んでいます。
その点でいうと、今回はいい絵本を選べたなと思っています。
バスク地方について
この絵本は、フランス・バスク地方に伝わる物語をもとにしています。
フランス側のバスク地方に暮らしたイギリス人牧師、ウェントワース・ウェブスターの再話をもとに翻訳されました。
ウェブスター牧師は、バスク人女性と結婚し、地元の人から聞き集めた民話をまとめ本を出しています。
その本に収められているのが「ヘビと船長」です。
バスクとは、ピレネー山脈をはさんでフランスとスペインにまたがる地方のことです。
独自の文化をもち、ヨーロッパでもっとも古い民族と呼ばれています。
フランシスコ・ザビエルもバスク人です。
バスク語もとてもユニークな言語といわれ、ヨーロッパのどの言語にも属さない、完全に孤立した言語だそうです。
とても複雑で「悪魔がバスク語を習おうとして、七年間学んだけれどあきらめた」という言い伝えがあるそうです。
構造や表現に日本語と共通しているところもあるそうで、太陽が出ているのに雨が降ることをバスク語でも「狐の嫁入り」というそうです。
本書の裏表紙には、バスク語で物語の出だしが書いてあります。
「ヘビと船長」
むかし、ひとりの船長がいました。世界の海をわたりあるいた、うでのいい船乗りでしたが、わるいことがかさなって、船をうしない、いまでは海辺の村で、ほそぼそとくらしていました。船長のいちばんのたのしみは、朝はやく、さんぽをすることでした。
世界の海をわたりあるいてきた船長はなぜ船を失ったのか?
なぜ船長は、ヘビの突拍子もない申し出を素直に聞き、やみくもに従ったのか?
ヘビや船長や魔女は何を表しているのだろう?
バスクの歴史と関係があるのだろうか?
いろいろと考えさせられる昔話です。絵本をもとに、お子さんとバスク地方の歴史を調べてみるのも面白いかもしれませんね。
著者紹介
ふしみ みさを
1970年埼玉県生まれ。上智大学仏文科卒。
絵本を好きになったきっかけは、子どもの頃父親が、自分や近所の子を主人公にして漫画付きのお話をしてくれたこと。
20歳の時、パリと南仏エクサンプロヴァンスに留学。洋書絵本卸会社、ラジオ番組制作会社、餃子店経営を経て、海外の絵本や児童書の翻訳、紹介につとめている。ペットは、顔、頭、目、耳、鼻、性格ともに悪い、忠義心のないラブラドール。
おもな訳書に『うんちっち』(あすなろ書房)、『トラのじゅうたんになりたかったトラ』(岩波書店)、『どうぶつにふくをきせてはいけません』(朔北社)、「せんをたどって」シリーズ(講談社)、『トトシュとキンギョとまほうのじゅもん』(クレヨンハウス)、『ホラー横町13番地』(偕成社)、『おやすみ おやすみ』(岩波書店)、「ハムスターのビリー」シリーズ、『ゾウの家にやってきた赤アリ』『大スキ! 大キライ! でも、やっぱり…』(ともに文研出版)『ねむいねむいちいさなライオン』『せかいをみにいったアヒル』『チビウオのウソみたいなホントのはなし』『クリスマスをみにいったヤシの木』(以上、徳間書店)など多数。
ポール・コックス
1959年パリ生まれ。両親はオランダ出身の音楽家。独学でアートを学んだ。
絵画制作が主だが、絵本、舞台美術、ポスターや広告など、活動は非常に幅広い。
多数の絵本を出版しており、日本語にも訳されている「えのはなし」は、ボローニャ国際児童図書展で受賞。
2006年板橋区立美術館の招待で若手絵本作家に向けたワークショップを行った。
ポスターは、パリ市、ナンシーのオペラ座、ジュネーブの大劇場、リールの北劇場はじめ、数多く制作。
舞台美術やコスチュームデザインでは、振付師バンジャマン・ミルピエとのコラボレーションが多く、「くるみ割り人形」(2005年/ジュネーブ大劇場、アモヴェオ(2006年/パリ オペラガルニエ)、「ペトリューシュカ」(2007年/ジュネーブ大劇場)他。アーティストとしては、数多くの美術館で、遊び心あふれる、ビジター参加型の巨大インスタレーションの制作を行っている。Jeu de Construction「構築遊び」(2005年/パリ、ポンピドゥセンター)Méthode「メソッド」(2007年/ルクス・バレンシア)Le Boulingrin de l’oncle Toby「トビーおじさんの芝生」(2008年/ショーモン)など。2013年にはフォンテヴローの修道院で風景画のシリーズを発表した。 日本でも、クリエイションギャラリーG8で2度、金沢のBUH、東京のパール・ギャラリーにおいて個展を開催。日本での広告は、ルミネのクリスマス広告、北陸新幹線開業の広告を手がけた。この秋には日本初の作品集「ポール・コックス デザイン&アート」を出版予定。(パイ・インターナショナル)
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